【平成六年七月号の慈愛より】

そして、次第次第に陽差しがはっきりと見え始めました。おやおやと見ておりますとアッという間にすっかり晴れ渡り、今度は朝の清らかな太陽の光明が皓皓と奥ノ院に照りつけます。このわずかに五,六分の間でしょうか奥之院分身堂が私の目の前に大きく浮き上がって見えたのであります。長年山の中に暮らして居りましても、この様に鮮やかな光明が濃い朝霧を押しのけるように「あっ」という間に消え去っていく風景に接した事はあまりません。

弘長 合掌