私が子供の頃は釜戸でご飯を炊く事が普通でした。母は釜戸で炊けた白いご飯は木のおひつに移して、釜戸に残った焦げた所は上手にしゃもじですくい取ってよくお焦げのおにぎりを作ってくれました。母が両方の手でにぎってくれたおにぎりはとても美味しくてお焦げのおにぎりを渡してくれるのを待って釜戸の前に居た事をこの頃よく思い出すのです。仏さまは【右ほとけ左衆生】と私たちの手を例にとり人には良いところも悪いところもあるんだよ。と教えて下さっています。母が両方の手で握ってくれたおにぎりには一杯の愛情があふれていたのだと思います。私たちが人の優しい手に触れた時仏さまの優しい手を見つめた時、仏さまは私たち人の手を通して優しさや暖かさを教えて下さって居るのだと思います。母が亡くなる前のよく云っていた「人に優しくしてあげて下さい」その言葉には人として大切な暖かさや温もりがあるのだと思います。

弘尚 合掌